「お尻が赤くなってきた気がする……」 「かかとに傷ができてる、どうしよう」
訪問先で、ご家族からよく聞く言葉です。
床ずれ(褥瘡:じょくそう)は、一度できると治るのに数ヶ月かかることもあるやっかいな傷です。でも、予防は家庭でもできます。
20年間、多くのご家庭で床ずれの予防・処置に関わってきた私が、一般書には書かれていない現場のリアルをお伝えします。
床ずれ(褥瘡)とは
長時間同じ姿勢でいることで、体重がかかる部分の皮膚や筋肉の血流が止まり、組織が壊れてしまう傷のことです。
できやすい場所(骨が出っ張っている部分)
- 仙骨部(お尻の真ん中、尾てい骨の少し上)← 一番多い
- かかと
- 肩甲骨
- 後頭部
- くるぶし
- 耳(横向きで寝る方)
訪問先で見つかる床ずれの約6割は仙骨部です。おむつの中で見えにくいので、毎日の観察が何より大事です。
ステージ(深さ)の見分け方
| ステージ | 見た目 | 対応 |
|---|---|---|
| Ⅰ度 | 赤くなっている・押しても白くならない | ここで止める!家庭で対処可能 |
| Ⅱ度 | 水ぶくれ・皮がむけている | 訪問看護・皮膚科へ |
| Ⅲ度 | 皮下組織まで傷が達している(穴が開く) | 医師の治療必須 |
| Ⅳ度 | 骨や筋肉が見える | 入院治療レベル |
Ⅰ度で見つけられるかどうかが勝負です。ここを逃すと一気に悪化します。
予防の3本柱
1. 体位変換(寝返りの介助)
2時間に1回を目安に、向きを変えます。
- 右向き → 仰向け → 左向き → 仰向け……を順番に
難しい場合は、エアマットを導入してください。体圧分散機能で、体位変換の負担が大幅に減ります。介護保険でレンタルできます(月500〜1,000円)。
詳しくはこちら → 福祉用具レンタルの使い方
2. スキンケア(皮膚を清潔&乾燥させすぎない)
NG:こすって拭く/強い石けんで洗う/乾燥したまま放置
OK:
- ぬるま湯と弱酸性の洗浄剤でやさしく洗う
- 押さえるように水分を拭き取る(こすらない)
- 保湿クリームで皮膚を守る(ワセリンでもOK)
おむつ内の蒸れも大敵です。尿・便は長時間放置しない。これだけで発生率が大幅に下がります。
3. 栄養(たんぱく質が命)
床ずれは「栄養不良」で一気にできます。特にたんぱく質とビタミンC・亜鉛が重要。
- 肉・魚・卵・大豆製品を毎食少しずつ
- 食が細い方は、栄養補助ドリンク(明治メイバランス・アバンド等)を1日1本
食事がとれていない方は、訪問看護師や管理栄養士に相談してください。
やってはいけないNG対応
訪問先でよく見る、逆効果な民間療法です。
❌ マッサージして血行をよくする → 皮膚が壊れて悪化します ❌ ドーナツ型クッションを敷く → 周囲の血流を止めてかえって悪化 ❌ 消毒液(マキロン等)をかける → 新しい細胞まで壊します ❌ 乾燥させて治す → 今は**湿潤療法(うるおいを保って治す)**が主流 ❌ 絆創膏で覆う → 傷のサイズに合わないと蒸れて悪化
見つけたらすぐやること
- ケアマネ・訪問看護師に連絡(今日中に)
- 写真を撮る(日付入りで、経過観察のため)
- その部分に体重をかけない(向きを変える)
- こすらず洗って清潔に
Ⅱ度以上は自己判断せず、必ず医療者の指示を受けてください。
訪問看護師が現場で使っている予防グッズ
実際の訪問先で「これは効いた」と感じているものです。
エアマット:介護保険レンタル推奨。「モルテン製」「ケープ製」が訪問先でも多く使われています。
ポジショニングクッション:横向き姿勢を保つための専用クッション。丸めたバスタオルでも代用できますが、専用品の方がズレません。
スキンケア用品:
- 洗浄:コラージュフルフル泡石鹸(弱酸性・低刺激)
- 保湿:サベックス・ヒルドイド(処方)・白色ワセリン
- おむつかぶれ予防:亜鉛華軟膏・アズノール軟膏
市販薬で迷ったら、訪問看護師や薬剤師に聞いてください。肌質と傷の状態で合う合わないが大きく変わります。
こんなときは訪問看護を検討してください
- 毎日の体位変換が家族だけでは難しい
- すでにⅠ度〜Ⅱ度の床ずれができている
- 栄養状態が悪く、予防に不安がある
訪問看護師は週1回〜毎日まで、状態に合わせて入れます。処置だけでなく、ご家族へのケア指導も大事な仕事です。
訪問看護の始め方はこちら → 訪問看護とは?費用・使い方・申し込み方法
まとめ
- 床ずれは予防が9割
- **Ⅰ度(赤み)**で気づけば家庭で止められる
- 3本柱:体位変換・スキンケア・栄養
- NG対応(マッサージ・ドーナツ枕・消毒液)に注意
- 悪化したらひとりで抱えず訪問看護へ
床ずれができると、ご本人もご家族もつらい。でも、毎日の観察とちょっとした工夫で防げます。
おうちで最期まで過ごすために、床ずれゼロを一緒に目指しましょう。