「親の物忘れがひどくなってきた。そろそろ介護保険を使った方がいい?」 「病院で『介護保険の申請を』と言われたけど、どこで何をすればいいのか分からない」
訪問先でよく受ける相談です。
介護保険の申請は、思っているより簡単です。でも、知らないと余計な時間がかかる落とし穴もあります。
20年間、多くのご家族が申請する場面に立ち会ってきた私が、最短ルートと避けるべき失敗をまとめました。
介護保険が使える人
第1号被保険者(65歳以上)
介護が必要になった原因を問わず、誰でも申請できます。
第2号被保険者(40〜64歳)
特定疾病(16種類)に該当する方のみ申請可能。代表的なものは:
- 末期がん
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
- 脳血管疾患
- 若年性認知症
- パーキンソン病
詳しくは市役所で確認できます。
申請から認定までの流れ(7ステップ)
ステップ1:市役所の介護保険課に相談(所要10分)
まずは**市役所の介護保険課(または高齢者支援課)**の窓口へ。
持ち物:
- 介護保険被保険者証(65歳で自動的に届くピンク色のカード)
- 本人確認書類
- マイナンバーが分かるもの
本人が行けない場合、家族だけでも申請可能です。委任状も原則不要(自治体により異なる)。
ステップ2:要介護認定の申請書を提出(所要15分)
窓口でもらえる申請書を書いて提出するだけ。ここで主治医の名前を書く欄があるので、かかりつけ医の名前・病院名を事前にメモしておくとスムーズです。
主治医がいない場合は、窓口で相談すると紹介してもらえます。
ステップ3:訪問調査員が家に来る(申請から1〜2週間後)
自治体の調査員が家に来て、本人の心身の状態を聞き取り調査します(所要1時間程度)。
ここが一番大事です。訪問看護師として立ち会った経験から、失敗しないコツ3つをお伝えします。
👉 コツ1:本人が「できる風」に答えないよう、家族が補足する
高齢の方は調査員の前では「できます、大丈夫です」と答えがち。でも実際は歩けない・食べられないというギャップがよくあります。 → 家族が普段の様子をその場で補足してください。
👉 コツ2:普段できないことをメモして持参
「週何回デイケアに行けているか」「排泄は自立か介助か」「夜中に何回起きるか」など、具体的な数字があると正確に伝わります。
👉 コツ3:調子が悪い日の様子も伝える
調査の日がたまたま調子が良い日だと、実態より軽く判定されます。普段の最悪な状態も必ず伝えてください。
ステップ4:主治医が意見書を書く(申請から2〜4週間後)
市役所から主治医に直接依頼が行き、医師が意見書を書きます。家族が動く必要はありません。
注意:しばらく病院を受診していない場合、意見書のために先に1回受診しておく必要があります。
ステップ5:審査会で判定(申請から4〜5週間後)
調査結果+主治医の意見書をもとに、介護認定審査会で判定されます。家族は何もしなくてOK。
ステップ6:認定結果が郵送で届く(申請から30日前後)
結果は 要支援1・2 / 要介護1〜5 / 非該当 のいずれかで届きます。
| 区分 | 状態の目安 | 月の支給限度額(目安) |
|---|---|---|
| 要支援1 | 立ち上がり等に一部支援が必要 | 約5万円 |
| 要支援2 | 要支援1より複雑な支援 | 約10万円 |
| 要介護1 | 部分的な介護が必要 | 約17万円 |
| 要介護2 | 軽度の介護が必要 | 約20万円 |
| 要介護3 | 中度の介護が必要 | 約27万円 |
| 要介護4 | 重度の介護が必要 | 約31万円 |
| 要介護5 | 最重度(ほぼ寝たきり) | 約36万円 |
注意:「非該当」の場合でも、自治体の独自サービス(介護予防教室等)は使えることが多いです。
ステップ7:ケアマネを決めて、サービス開始
認定が下りたら、ケアマネジャーを決めて、使いたいサービスを組み合わせたケアプランを作ってもらいます。
ここからが本番です。ケアマネ選びはこちら → ケアマネジャーの選び方
🚨 最短で使いたい時の裏ワザ「暫定ケアプラン」
「認定結果を待っていたら、サービス開始が30日後になる……」 「でも今すぐ訪問介護を入れたい」
そんなときは暫定ケアプランが使えます。
仕組み:認定結果が出る前でも、「おそらくこのくらいの認定が下りるだろう」という見込みでケアプランを作り、申請日に遡って介護保険を適用できる制度です。
注意点:もし実際の認定が見込みより軽かった場合、超過分は自費になります。ケアマネに必ず相談してください。
よくある質問
Q1. 申請から認定まで何日かかる?
原則 30日以内。ただし、調査員の混み具合・主治医の意見書の遅れ等で遅れることが多いです。
Q2. 「まだ早い」と言われたら諦める?
諦めなくてOK。心配なら申請してみましょう。結果「非該当」でも申請は何度でもできます。
Q3. 要支援・要介護の区分に不満があったら?
区分変更申請で再審査できます。状態が変われば区分も変わります。
Q4. 認定には有効期限がある?
初回6ヶ月、以後12〜24ヶ月。期限前に更新申請が必要です(市役所から通知が来る)。
Q5. 病院に入院中でも申請できる?
できます。むしろ退院前に申請しておくのがベスト。退院した日にサービスが使えます。
退院準備の流れはこちら → 退院後の在宅生活、何を準備すればいい?
訪問看護師の現場から
申請を先延ばしにして手遅れになるケースを、本当にたくさん見てきました。
「まだ元気だから」「本人が嫌がるから」と後回しにしていると、急な骨折や脳梗塞で一気に介護が必要になったとき、認定が間に合わないのです。
「今は使わないけど、認定だけ取っておく」——これが賢い選択です。認定を取っておけば、いざというときすぐ使えます。
まとめ
- 介護保険の申請は市役所に行くだけ
- 認定まで約30日、すぐ使いたいなら暫定ケアプラン
- 訪問調査では普段の最悪な状態を伝える
- 認定は早めに取っておくのが正解
親の介護は、始まってから慌てることが多いです。でも、知っていれば怖くありません。
住み慣れたおうちで最期まで過ごすための第一歩として、介護保険の申請から始めましょう。
申請直後にやることはこちら → 親の介護が始まったら最初にやること5つ